2021年5月下旬、1998年に発生した和歌山毒物カレー事件の現場を訪ねました。
Fig. 1 紀ノ川 |
▼ 毒物がニュースに頻繁
オウム真理教による、松本サリン事件や地下鉄サリン事件から3年。事件発生当時は、青酸カリやサリンといった毒物の名前が、現在よりも頻繁にニュースを賑わせていたように思います。
園部地区(Fig. 2)第14自治会で開催された夏祭りで配布されたカレーに亜ヒ酸が混入されており、口に入れた60人余りが病院で治療を受け、そのうち4人の尊い命が奪われました。現場は、南海本線、JR紀勢本線が乗り入れる和歌山市駅から北方向に約4
km進んだ新興住宅地。
紀ノ川(Fig. 1)に架けられた紀ノ川大橋を渡り、右岸沿いの堤防に造られた道を川上へ。車の交通量が多い県道7号線(粉河加太線)から南方向に延びる路地を約300
m入った、戸建てに囲まれた空き地が22年前の夏祭り会場でした。
Fig. 2 公園@園部地区 |
▼ 雑然とした印象の現場
周囲は、訪問前にイメージしていた閑静な住宅地というよりも飲食店や建設会社の資材置場が点在する商業地兼住宅地で、雑然とした印象。近くには用水路や田畑が見られ、宅地化前はのどかな田園地帯だったことがうかがえます。
事件後、空き地には2軒の戸建が建つ一方、林健治、眞須美宅は事件後に放火、解体され、空き地を町内会が買い取った後、花が植えられました。
自白や物証がなく、状況証拠だけで死刑が確定し、2020年には最高裁への再審請求の特別抗告がなされた事件は、今後どのような行く末をたどるのでしょうか。釈然としない思いを抱えながら現場を後にしました。
■ 参考文献
「毒婦」和歌山カレー事件20年目の真実(田中ひかる)ビジネス社
もう逃げない。~いままで黙っていた「家族」のこと~(林眞須美死刑囚長男)ビジネス社