浜田省吾と新宿

 浜田省吾と新宿の関係について書いてみたい。浜田省吾の作品に新宿が出てくるのは1970年代後半の3作品。

西武新宿線
Fig. 1 西武新宿線
 デビューアルバムの「生まれたところを遠く離れて(1976年)」では裏ジャケットに高層ビルを背景にした新宿の路地裏が写し出され、3枚目の「イルミネーション(1978年)」では京王プラザホテル(Fig. 2)の1室にたたずむ省吾がジャケットに使われている。
 また、5枚目の「君が人生の時(1979年)」には「恋の西武新宿線(Fig. 1)」という楽曲が収められている。

 新宿=東京(大都会)の象徴と考えると、「イルミネーション」はもっとも都会を意識したアルバムといえる。当時シティポップスというジャンルが流行っていて、このアルバムもそれを意識した作りになっている。

 シティポップスとは、「都会的で洗練された、クールな音楽」といった意味らしい。改めてアルバムを聴いてみると、2曲目まではそのような雰囲気が出ているものの、3曲目以降はバラードや歌謡曲的な楽曲が続く。後者の方が後年、ライブで歌われたりリテイクが発表されたりしているのは皮肉である。

京王プラザホテル
Fig. 2 京王プラザホテル
 1970年代最後のアルバム「君が人生の時」を置き土産に、浜田省吾はポップスからロックミュージックへ傾倒していく。

 1980年代最初のアルバムの名は「Home Bound=家路(1980年)」。「(ロックに)戻ってくるために(ロックから)離れることが必要だった」という帯書きが付いている。※カッコ内は、筆者の注釈。

 省吾の心は新宿=東京(大都会)から離れていったのだろうか?「東京」という楽曲も収録されているが、そこに描かれている大都会はもはや称賛や憧れの対象ではない。

※ 写真(Fig. 1)は、PolePoleRailwaysHomePageさんからお借りいたしました。
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