活性酸素に関する講演を聞いて

 2016年3月中旬に、横浜市緑区の東京工業大学すずかけ台キャンパス(Fig. 1)で聴講した内容を以下に報告します。

▼ 演題 酸素・活性酸素についての35年間の研究・教育を振り返って
▼ 講師 大坂武男さん
▼ 会場 東京工業大学すずかけ台キャンパス大学会館3階多目的ホール
横浜市緑区長津田町4259
▼ 日時 2016年3月18日(金)15:20~16:50

すずかけ台キャンパス
Fig. 1 すずかけ台キャンパス
▼ 酸素の還元と水の酸化

 酸素は、水素イオンと電子と反応し還元(酸素を失う、水素、電子を受け取る、酸化数が減少する。)されて水になり、水は酸化(酸素を受け取る、水素、電子を失う、酸化数が増加する。)されて酸素と水素になる。燃料電池や光触媒など、既に実用化された科学技術において利用された有名且つ極めて単純な化学反応である。

 この反応はいつも完全に進む訳ではなく、不完全に酸素が還元、あるいは水が酸化されると、寿命は短いが、エネルギー状態の高い活性酸素(ROS=Reactive Oxygen Species)が生まれる。その代表例として、以下の3種類が挙げられる。

 それぞれ、酸素が1電子還元されたスーパーオキシドアニオンラジカル(O2-)、2電子還元された過酸化水素(H2O2)、3電子還元されたヒドロキシルラジカル(OH-)である。特に、電子が奇数個還元されたO2-とOH-は、反応性が高く、生体内で様々な物質を酸化する有害な物質として知られている。

キャンパス入口
Fig. 2 キャンパス入口
▼ センサを医療、環境に応用

 活性酸素の働きを阻害し、生体内を健康に保つため、SOD(Superoxide dismutase)やカタラーゼなどの活性酸素を分解する酵素やアスコルビン酸(ビタミンC)など活性酸素による酸化を抑制する抗酸化物質が存在する。これらの働きを調査、研究し、活性酸素がどのくらい存在するかを測定するセンサを開発した。

 検出対象を神経伝達物質であるNADH(nicotinamide adenine dinucleotide)や有毒物質であるヒ素に変え、医療や環境分野に応用した。

 また、燃料電池やバイオ電池のエネルギー効率を高めるため、新たな電極触媒の開発を検討した。白金に他の金属を混合し、従来の白金触媒よりもコストとエネルギー効率の両面で優位な触媒を開発した。


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