さよなら川崎市役所本庁舎

 2016年10月中旬に、川崎市川崎区にある川崎市役所を訪れました。建て替えによる本庁舎の解体を前に開催された「さよならイベント」の様子を紹介します。

時計塔@川崎市役所
Fig. 1 時計塔@川崎市役所
▼ 78年間、市政で利用

 青空が広がる秋晴れの下、午前9時の開場を待ちきれず約30人が玄関前に列を作っていました。正面玄関で見学ツアーの整理券を受け取り、ツアー開始までの約30分間、庁舎内を散策します。

 本庁舎は1938年に竣工し、2016年まで78年間、川崎市政で利用されてきました。耐震性に難があり、新庁舎に建てかえられる事になりました。

 本館、東館、時計塔(Fig. 1)、戦後に建設された北館からなり、一部のデザインは新庁舎に引き継がれる予定です。職員の渡さん案内の下、正面玄関、市長室、市長応接室(Fig. 2)、講堂、入札室を見学しました。

市長応接室@川崎市役所
Fig. 2 市長応接室@川崎市役所

▼ 竣工当初の部材が残る

 タイルを始め、外観には建設当初の部材は残っていないそうですが、正面玄関、講堂の石材や暖炉、扉など内装には数多く残されています。これらの部材をなるべく壊れないよう解体し、新庁舎の一部に使用、もしくは展示を予定しているそうです。

 2階の市長室と講堂の間の左右の壁に敷き詰められた、黒光りする細長いタイルは重厚感があり、印象に残りました。続いて、建替準備室長を務める和田さんと戦中に神奈川県の防空監視哨員として時計塔に勤務した星野さん、戦後に本庁舎を増築する際に設計を担当した原さんによるトークショー(Fig. 3)を聴講しました。

トークショー@川崎市役所
Fig. 3 トークショー@川崎市役所
▼ 当事者の貴重な話を伺う

 戦後、国道15号線と京急川崎駅を結ぶ京急通りからJR川崎駅を結ぶ市役所通りに、目抜き通りが変更された事、時計塔は、防空監視塔として建設された事、本館を3階から4階に増築する際、天井のコンクリートを剥がして荷重を確保した事など、当事者にしか分からない貴重な話を数多く伺いました。

 新庁舎が完成するまで約6年、第2庁舎を解体した後、跡地を緑地にし一連の計画が完了するまで約7年と長期に渡ります。緑豊かな人が集う市役所ができるのを心待ちにしたいと思います。


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