市民ミュージアムを訪ねて

 2015年4月中旬に、川崎市中原区にある川崎市市民ミュージアムを訪ねました。興味を惹かれた展示を3点紹介します。

逍遙展示空間
Fig. 1 逍遙展示空間

▼ 吹き抜けの展示空間

 武蔵小杉駅から川崎市営バスに乗り約15分、多摩川の右岸に位置する等々力緑地の西側にあるミュージアムに到着しました。広々としたエントランスを抜け、1階の逍遙(しょうよう)展示空間(Fig. 1)に進みます。

 白黒のまだらな模様が印象的な床に、現代美術の作品が置かれています。スケールの大きな作品を吹き抜けの屋内空間で鑑賞できるのは珍しいです。

 福田繁雄氏の青色と黄色の人々が行き交う作品と、手塚治虫氏のはにわのような顔が複数配置された作品が印象に残りました。

トーマス転炉
Fig. 2 トーマス転炉
▼ 産業遺産と映像資料

 東側は北側がガラス張りになっており、屋外に展示された巨大なトーマス転炉(Fig. 2)を観る事ができます。1937(昭和12)年に日本鋼管(現JFEスチール株式会社)が、イギリスから輸入した機器で、銑鉄から不純物を取り除く工程で使用されていました。

 大きさは、外径約4.2 m、高さ約7.6 mで重さは約60トン。雨に濡れながら静かにたたずむ黒ずんだ姿は、まるで芸術作品のようでした。

 3階には、ビデオライブラリが設けられ、洋画、邦画を始めとする映像作品の閲覧できます。なかでも川崎市が制作した市政ニュース映画は、戦後の市民生活を記録した資料としてとても貴重です。

3階から観た階下の眺め
Fig. 3 3階から観た階下の眺め
▼ 地元の貴重な映像資料

 平日で雨天のためか来場者は少なく、伸び伸びと展示を楽しむ事ができました。とはいえ、人が集まる博物館であって欲しいのも事実です。

 歴史、漫画、映像とコンテンツの守備範囲が広いゆえ、焦点がぼやけた展示になっている事、最寄り駅からのアクセスが悪く徒歩で向かう場合のルートが無味乾燥としている事が気になりました。

 前者は、複数の領域に跨がった展示を企画する事、後者は、点在する歴史にまつわるポイントを紹介し、併せて歩きやすい歩道を確保する事で改善ができるのではと感じました。これからも市民のためのミュージアムとしての役割を果たして欲しいと願います。


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