今、日本に足りないもの~変革の精神~

 2021年3月上旬に、オンラインで聴講した内容を以下に報告します。

▼ 演題 今、日本に足りないもの~変革の精神~
▼ 講師 弁護士 橋下徹さん
▼ 会場 オンライン(Zoom)
▼ 日時 2021年3月4日(木)16:00~17:00

▼ 「実体的正義」と「実体的正義」

 誰もが正解が分かる問題への対応を判断するのは容易だが、誰も正解が分からない問題を判断するのは難しい。若いうちは前者を多く任されるが、年齢や経験を重ねると後者をより多く任されるようになる。現在、首相を務める菅義偉(よしひで)さんは「ふるさと納税」や「携帯電話料金の見直し」など、誰もが賛成するであろう施策を実現するのは得意だが、賛否が分かれる問題に対応する施策の実現は不得意だ。

 正解が分からない問題に対応する場合、正解はないと割り切ることが肝心だ。また、「実体的正義」ではなく「手続的正義」を利用するとよい。ケーキを2人で半分に分ける場合、真っ二つに分ける方法と、分ける人と取る人を別にする方法がある。前者は「実体的正義」、後者は「手続的正義」の例だ。

▼ 徹底的に議論し、判断を

 正解はないと割り切っても判断は必要だ。複数の案を用意しそれらの支持者や専門家に徹底的に議論させ、その内容から判断するとよい。賛成派と反対派に議論させてもよい。「郵政民営化」を成し遂げた小泉純一郎さんは、そのようなやり方を取り、橋本さんが市長、府知事の時に接した優秀な部下も、異なる案を支持する相手を連れてきて議論していた。

 正解が分からない問題の対応では、議論なしに結論を出してはいけない。「新型コロナウイルスの対応」や「東京オリンピックの開催可否」はまさにそのような問題だ。「Go To トラベル事業」で経済を活性化する、東京オリンピックを開催すると最初から結論を出して対応するとうまくいかない。徹底的に賛成派と反対派に議論させれば、結論は出るはずだ。

▼ 古いものを退出させ変革を 

 おおさか維新の会は、住民投票で大阪都構想を2回否決された。その反省から、変革に対して不安を感じている人々の気持ちに対する配慮や優しさが必要と考える。古いものを退出させないと新しいものは生まれないし、古いものを活性化させるだけでは状況を大幅に改善することはできない。

 大阪府と大阪市の対立は、おおさか維新の会が両首長を務めることで軽減された。いわば治療により病気が快方に向かったといえる。しかし、以前の状態に戻らないようにするには、抜本的な手術が必要だ。

▼ 不安への配慮や優しさも必要

 そのような時に「大阪市をなくす」、「府と市を統合する」とストレートに訴え、大阪市を大切に思う人々の気持ちに寄り添わなかった。「大阪市をなくさないで」という声があれば、「大阪市は残します」、「公共交通機関のサービスは今まで通り行います」と不安を解消する対応を取るべきだった。

 正解が分からない問題には「手続的正義」と「徹底した議論」で判断し、先に結論を出さない。変革を起こすことは必要だが、不安を感じている人々に寄り添う配慮や優しさが必要だ。


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