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2015年3月中旬に、神奈川県箱根町を訪れました。箱根湯本駅近くのホテルに宿泊した翌朝、箱根登山鉄道の始発列車に乗り、塔ノ沢駅に向かいました。
オレンジとグレーのツートンカラーに白のラインが入った3両編成の小さな電車(Fig. 4)は、カーブと傾斜がきついレールをキィーという摩擦音をたてながら登っていきます。約5分でトンネルとトンネルの間に造られた無人の塔ノ沢駅に着きます。 簡易な自動改札装置に交通ICカードを当てて、運賃を精算します。跨線橋を歩き、アジサイの名所、阿弥陀寺に続く山道を横目に、上りホームに続く階段を下ります。 やがて、深沢銭洗弁財天と火伏観音の鳥居が現れます。小さな社殿の前には何匹もの石蛙(Fig. 1、Fig. 2、Fig. 3)が座り、参拝客を迎えてくれます。 多くの蛙は丸っこく愛らしい造形をしており、大きく真ん丸な目が特徴的。体には濃緑色の苔が生え、蛙らしさを一層際立たせています。
この弁財天を建立したのは、松井房吉。1990年代後半にインターネットを利用したオンライン取引で業績を伸ばした証券会社、松井証券の創始者です。 彼が箱根湯本の温泉旅館に滞在している時、白蛇の夢を見ました。弁財天はもともとインドで水の神でしたが、日本で人頭蛇身の宇賀神(うがじん)と同化され蛇とのつながりが生まれます。 さらに弁論の才能(弁才)だけでなく、商才や福徳の神としても信仰され、弁才天から弁財天に表記が変化します。水の神と福徳の神の信仰をあわせ、お金を清らかな水で洗う銭洗の風習が生まれたのでしょう。 足下には山肌から湧き出た清らかな水が流れ、お金を洗うためのザルが用意されていました。静寂で落ち着く雰囲気のなか、松井証券の成功にあやかり福徳のご利益をお祈りしてはいかがでしょうか。 参拝者を温かく見守る蛙達もお忘れなく。水と緑が豊かな箱根には、大平台駅と塔ノ沢駅の間にある蛙(かわず)の滝など、他にも蛙にまつわるスポットがあります。
深沢銭洗弁財天 神奈川県箱根町塔ノ沢 |